大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和23(れ)1691 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人相沢登喜男の上告趣意は末尾添附別紙記載のとおりである。

(一) 上告論旨第一点は、被告人、相被告人および証人の供述が取調のたびに

変つて一貫性を欠くのにそれを証拠に取つたのは違法だ、というのであるが、全記

録に目を通して各人毎度の供述が全然つじつまが合わないほど食いちがつていると

は思えないし、多少は食いちがいがあるかも知れないいくつかの証拠を照らし合わ

せて事実を判断するのが裁判所の職責であつて、原審がすべての証拠を綜合して被

告人と相被告人との間に殺人の共謀協力があつたと判断したについて、何等の違法

もあり得ない。

(二) 上告論旨第二点は、原審が被告人Aを従犯と見なかつたことを非難する。

Aが「ヤツチマヘ」と叫んだのが単に格闘に気勢を添えたのに過ぎないか、あるい

は格闘開始の合図であつたかが、本件の一焦点であるが、原審は第二の見解を採つ

て事前共謀の点と考えあわせ、被告人を本件犯罪の従犯ならぬ共同正犯と認定した

のであつて、その判断の筋道に違法はない。

(三)なお原審はその点をハツキリ説明していないが、本件は元来被告人Aその

人がイカサマ賽を使つたと相手方から因縁を附けられたことから始まつたのであつ

て、原審がAを単なる従犯ではないと認めたのはむしろ自然な考え方であり、もし

Aは従犯に過ぎないと言わんとならば、それこそ充分な証拠を要するものではある

まいか。それだけの証拠は本件記録の全体を通じて見出され得ないように思われる。

要するに、上告論旨は原審の証拠による事実の認定を非難するのであつて、上告

の理由にならない。

よつて刑事訴訟法施行法第二条、旧刑事訴訟法第四四六条により主文のとおり判

- 1 -

決する。

以上は裁判官全員一致の意見である。

検察官 柳川真文関与

昭和二四年四月一二日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 穂 積 重 遠

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!